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決して広くはない店内は、やはり蔵元。酒を「売る」というより「造る」に主眼を置いた佇まいは、真摯に酒造りに携わる職人さんの自信が伝わり、キビキビと働く社員の姿が清々しい。
暖簾をくぐって店内に入ると、一組の外国人が何の躊躇もせず、数ある銘柄の中から『蓬莱』を買い求めていく。その方は日本で暮らしており、機会があるたびに直接蔵元まで足を運び『蓬莱』を買い求める…と、笑って答えてくれた。
そういえば、各地に日本酒の愛好家はもとより、杜氏を目指す外国人も増えて来た。全国に女性の杜氏さんも数多く活躍されており、物流の進歩と相まって、日本酒が世界に広がっていけば頼もしい限りだ。特にワインの歴史が深いヨーロッパでは、土地の料理と相性の良いお酒ということで、同じ醸造酒仲間の日本酒とのマッチングが新たに認識、期待されている。
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今回はお会いできなかったが、ここ渡辺酒造店のブレイズフォード・コディー氏はアメリカ・ユタ州出身。飛騨市出身の奥様とアメリカで結婚、現在は飛騨の町で酒造りに精を出す。
最近、テレビや雑誌に、日本酒をはじめ、日本茶、陶芸、盆栽、刀鍛冶など、日本独特の文化が世界に紹介されて、多くの外国の方がその魅力にハマっている。日本人以上に日本をよく知る外国人も稀ではない。その道を究めようとする同氏に心意気をじっくり聞いてみたい。次の機会にはぜひお会いしたいものだ。
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余談だが日本酒と蕎麦。江戸時代からこの組合わせは切っても切れない関係がある。蕎麦を注文すると、粉を挽き、麺を打ち、茹でて仕上げる風景は見るだけで垂涎ものだが、この時間をゆったりと過ごすための必需品、これが日本酒である。
注文すると同時に箸を持って、早くして!と、いかにも江戸っ子らしいせっかちな客もいれば、この待ち時間にゆったりと酒を楽しむ人もいる。これが粋人だろうか、生き方に自信と余裕を感じさせてくれる。ということで、日本酒を置いていない蕎麦屋はない。飛騨の蕎麦屋も、もちろん地酒を用意しているが、こういった『蕎麦を待つ間に一杯」、こんな風景を見る機会が減ったのは残念。私自身、初めて訪れた飛騨で美味しい蕎麦を頂いたが、飛騨の何も分かっていないのに、飛騨のすべてを知ったかぶりで家族や友人に話すのも愉快だ。 |