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酒食和楽通信
<酒と食の技術と経済>



物流が酒の経済を変えた



  酒は地域文化の集大成。米により、水により、同じ作り方でここまで個性を発揮できるものは他に思い浮かばない。だからこそ、その地域の個性が生かされた酒が生まれてくる。今の工業製品のように、全国どこで作っても同じ酒だったら、酒文化が大きく変わっていただろう。流通の良くない時代は、まさに地産地消の時代でもあった。今、騒がれているこの言葉は、酒については既に数百年も前から実践されていたのである。

  まず作られたその土地でのみ味わえる旨い酒は、時間と輸送手段がなく、ほかの地域に届けることができなかった。このため作り手が一人でも十人でも、その費用を稼げる量を造れば、そしてその生産量に合った消費者がいれば、十分ビジネスとして成り立っていたのである。現在の流通と保存能力の進展は、美味しい酒を全国に、さらに世界に届けることが出来るようになった一方で、小規模の蔵元がしっかりと生き残っていける原型がここにある。まさに地域密着型ビジネス。生産地で消費できる規模の酒蔵が生きていける所以でもある。

  現在の酒造技術と物流システムは、酒の経済を大きく変えつつある。かつてはその土地へ行かなければ味わうことができなかった酒が、どこにいても美味しく飲める形が作り上げられたのである。なかなか手に入らない「幻の銘酒」といわれる酒でも、タイミングさえ合えば確実に入手できる。酒の旨さは肴と心。気持ちよく飲む酒は、味わいまでワンランク格上げされる不思議な力を持っているもの。その分、限られたマーケットでのシェア争いは激化していくのである。 (201051)

 国土 敏明 (株式会社ケイ・ワン・プロジェクト)